top of page

【第1回】高市政権の「地域未来戦略」は若者の地元定着を促すか~今、若者は地方に多種多様な働く場を求めている~   もと帝京大学経済学部経済学科教授、一般社団法人 地域デザインオフィス代表理事 徳増秀博

6月12日
読了時間: 4分

更新日:8月6日

 高市政権の目玉政策の一つ「地域未来戦略」の柱に戦略産業クラスター計画があります。これは政府が指定した17分野の成長産業を地方に誘導し、企業・大学・研究機関などを集積することで、その連携協力を通じて技術革新や新事業の創出を促し地方の振興を進めるというものです。

実はこの戦略は目新しいものではなく、かつて2000年に政府が策定した「21世紀の国土計画のあり方」にもとづきその翌年に打ち出された産業クラスター計画の延長線にあると言えます。

確かに今後成長するであろう戦略産業17分野を指名したことは新鮮味がありますが、地方の活性化に結びつくまでには多くの課題があることも事実です。

成長産業17分野とは、AI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティ、コンテンツ、フードテック、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靭化、創薬・先端医療、フュージョン・エネルギー、マテリアル(重要鉱物・部素材)、港湾ロジスティックス、防衛産業、情報通信、海洋があげられています。細かい内容はっこでは割愛しますが、共通していることはいずれの分野も高度な技術が必要とされることです。青森・下北地域に関連する分野として、量子、エネルギー安全保障、フュージョン・エネルギーが考えられます。

早速に宮下青森県知事は「フュージョン・エネルギー拠点形成戦略」を打ち出しました。産業クラスターを具現化するためには、民間企業の力と高度な技術者が確保できるかが重要な要素になります。その点に立てば地方に大きな課題があることも事実で、理想と現実の間には乖離が存在することも見落とせません。


 これまで国や地方は、数多の地域政策を進め若い人材の地方からの流出を防ぎ産業振興に努めてきましたが、期待したほどの効を奏することもなく若者は都会へ流出し続け、過密過疎、都市と地方との2極化はますます顕著になっています。半世紀前に打ち出された田中角栄による「日本列島改造論」は、今私たちが高い利便性を享受している新幹線や高速道路網といった高速交通体系の基礎づくりの指針となり、中央と地方との時間距離の短縮によって工場の地方分散を進めました。青森では、下北地域のむつ小川原地区での大規模工業基地計画が進められました。


 私は半世紀にわたり、地方への企業・工場立地の仕事にたずさわり、地方に働く場をつくり若者が地元で安心して生活できる地域社会の実現に貢献すべく全国を歩き続けました。青森では、弘前方面へ数社の電子機械工場の誘致の実現に力を注いだことが思い出されます。しかし、依然として若者の流出は続き魅力ある地域づくりの夢は十分に成就することなく、道半ばであったと振り返っています。


 若者が地元に定着したくなるような魅力ある地方とはどのような姿なのか、大きな課題であり、それを描くことは大変にむずかしいことです。多様化する価値観のもとで労働スタイルが大きく変化、多様化してきている今日、一つのヒントとして若者に仕事の選択肢を多くそろえることではないかと考えています。名の通った工場の生産ラインで統一された作業着を着て仕事をするのではなく、自分の個性や能力が地方に活かせる、貢献しているという実感が得られる仕事であれば、企業ブランドがなくても、それが今日の若者にとって、もちろんすべてはありませんが、いかに多様な仕事の選択肢を用意できるかが魅力ある地方の一つの姿と言えるのではないでしょうか。


 高市政権の地域未来戦略が、地方の若者にとって魅力ある職業の創出に結びつくのか、そのことが大きな鍵になると考えます。


令和8年4月

 一般社団法人 地域デザインオフィス

代表幹事

徳増秀博



・プロフィール

現在 

一般社団法人 地域デザインオフィス代表理事、一般財団法人 日本立地センター監事  

略歴

農村地域工業導入促進センターを経て、一般財団法人 日本立地センター専務理事

退職後、帝京大学経済学部経済学科教授 2023年退官

長年、全国の企業立地活動や地域振興に関する調査研究に従事

経済産業省の産業立地政策へのアドバイスのほか、東日本大震災後の復興計画や工業団地の開発に従事

 
 
 

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page