
【第4回】 読書の秋 本に親しむ
更新日:16 時間前
10月は読書の秋。毎年10月27日から11月9日までが全国読書週間です。1947年に日本図書館協会が、戦争で荒廃した国民の生活や精神を読書で癒し社会文化の復興と向上を目的に設けたもので、80年の歴史があります。

日本人の読書時間は一日わずか9分
NHK放送文化研究所の調査によると、2025年の日本人の一日の読書時間(雑誌・マンガ・電子書籍含む)は9分と1965年に統計を始めてから最低になったそうです。読書よりSNS・ゲーム・動画に時間を費やしたことが要因です。国民平均でみれば読書時間はずいぶん減っていますが、それ以上に本を読む人が大きく減っているのです。平日に読書する人は国民の1割ほどですが、その人たちの「読む時間」はむしろ増えているそうです。つまり読書する人としない人との格差が拡大していることを示しています。とりわけ、10代、20代の学生や社会人の、そして女性の読書ばなれが著しい結果になっています。
紙の本は思考を深める
東京大学大学院の研究チームが先日、紙の本がデジタル本よりも脳の活動エネルギーを省力化でき、その分、思考が深められるという研究結果を発表しました。詳細は割愛しますが、単なる面白おかしではなく心情理解が必要なマンガを、学生に紙の本とデジタル版で読ませて理解度を測定したところ、紙で読んだほうが高かったことが認められたのです。同様の研究はスウェーデンやノルウェーの大学でも行われていて、東京大学と同じような結果になっているようです。パソコンやスマホのデジタル文書は画面の位置が不定で瞬時に切り替わるので、視覚的にも触覚的(本に触れない)にも空間的(平面な世界)にも紙に勝るものはないと分析しています。SNSの拡散効果は高くデジタル化の流れを否定するものではありませんが、あらゆる場面で急速に進むデジタル化に警鐘を鳴らすもので、デジタル化に相応しいもの、紙が相応しいものをしっかり区別する思考が強く必要だと思います。
もと鳥取県知事で総務大臣も務めた片山喜博さんが、ラジオ番組で図書館の役割を“紙の文化を提供する知の拠点”だと語っていました。図書館は活字文化の宝庫であり、本の貸出のほか、学びの場であり、出会いの場であり、コミュニティーの場など多様な人づくり機能を備えています。また先人たちが著した地域固有の歴史・伝統・文化の読み物を保全し、次の世代に継承していく大切な役割があることを再認識しなければならない、とも力説していました。
図書館の少ない青森
公共の図書館(大学等のものは除く)は全国に3,300ほどあります。青森県は15と和歌山県の11に次いで全国で46番目に少ないという統計もあります。国民の読書時間が減っているものの、紙の本に触れたい、読みたいと思う人は少なくありません。ただ、本に触れる場所や機会が身近にないことが問題とも言えます。青森市立図書館は青森駅前に立地する複合施設内(市役所の一部が入居)にあって利便性が高く、市民でいつも賑わっています。むつ市立図書館もバス便があり周囲に商業施設もあって利便性が良く、壁や屋根がガラスに覆われ植物が配置された読書テラス「光庭」があり、冬でも屋外で読書している気分を味わえる工夫がなされています(下の写真)。2025年8月には日刊ゲンダイデジタル(全国版)で紹介されたほどです。


新たに図書館をつくることは容易ではありませんが、商店の空き店舗や空き家などをリノベーションし、通勤通学帰りや買い物ついでに立ち寄れる小さな街の図書館の例も各地に見られ、街角に賑わいが生まれています。青森市立図書館のように複合施設内に設けたり、温浴施設の多い青森ならその一角に図書コーナーを設けるなどして、紙の本に触れる空間を民活でつくっていく工夫を考えてみてはどうでしょうか。※青森市のまちなか温泉には休憩スペースにコミック本コーナーがある。
タイパを忘れてゆっくり読書を
SNS・動画などデジタル社会が一層深化したことで、前後脈絡のない細切れの情報や真偽の不明な情報が氾濫する今日、私たちは情報を正しく受け止め判断する能力が求められています。そのためには論理的な思考のもとで情報をしっかり吟味し真偽を見極める時間が必要です。SNSなどネットでは自分の興味のある情報にしか接触しませんが、図書館には様々な分野の本が揃っていて、意外な発見や新たな興味を持つなど視野が広がり、ものごとの見方の広がりや深まりが期待できます。日ごろは仕事や家事など多忙でタイムパフォーマンスがもてはやされる時代ですが、時々は図書館に足を運び、ゆっくりと様々な本に触れ、また1冊を読み通す力を養うことが、将来を担う優れた人材の育成につながるのではないかと思います。
最後に蛇足ながら
福井が生んだ昭和の作家、水上勉(1919~2004年)と下北との縁は浅からぬ縁があり、彼の作品
には 下北を舞台にした作品がいくつかあります。一つは映画になった有名な「飢餓海峡」(1965年制作)があります。もう一つは、大正から昭和30年頃の時代を背景に、東通村で育った孤児の女性の半生を綴った「北国の女の物語」です。吉川英治賞を受賞した(1972年)この隠れた長編小説では、当時の下北の社会風俗が丹念に描写されています。小説の書き出しは「本州最北端といわれる下北半島の尻屋崎は芝草に被われ・・・・・」で始まります。そして主人公の女性は東通村尻労の大光庵のお堂で暮らしながら成長していく筋書きは印象的です。また、「わが山河巡礼」の中では、風間浦で生まれ浅虫温泉などへ出稼ぎしながら実家の家計を支えた実在の女性を描いた短編も心に残ります。秋の夜長にぜひ、手にとって一読してはいかがでしょうか。
(参考)
東京大学大学院総合文化研究科ホームページ
NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」
国民生活時間調査からみる読書の変遷 本の話Web田中裕士氏
パブリネット(全国公共施設検索サイト)
むつ市立図書館ホームページ ほか

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