【第3回】コンテンツ産業の地方展開の例(東北)と観光振興
更新日:8月29日
前回は、政府の成長戦略産業の一つコンテンツ産業の成長性と地方への展開の可能性について述べた。今回は引き続き、地方に展開したコンテンツ企業の例と地域振興への効果について述べてみたい。なお紙面の都合上、東北の例にとどめた。
東北における地方展開の例
●いわき市のアニメ会社 ㈲スタジオダブ ㈲スタジオダブは本社をいわき市に移したアニメ制作会社である。虫プロで活躍していた現社長の八幡正氏が、仕事で体調を崩しいわき市で療養したことが移設の契機となった。八幡氏は療養しながらアニメ制作を続けていたが、1983年に㈲スタジオダブをいわき市に設立した。当時、アニメ制作は地方にとっては新鮮な仕事で珍しいとあってアニメファンが集まるようになった。八幡氏はアニメ制作を続けながら、地方の潜在的な人材を発掘し、指導、育成しながら会社を成長させていった。八幡氏がいわき市を療養先に選んだ理由は定かではないが、山と海の自然が豊かで、空気も綺麗で新鮮な食材もあり、交通の便が良く東京から3時間足らずの距離にあることが関係しているのではないか。その後、㈲スタジオダブは、大手のバンダイナムコピクチャーズの傘下に入り、アニメの名作を手がけ、名探偵コナン、クレヨンしんちゃん、こちら葛飾区亀有公園北派出所、機動戦士ガンダムなど数々の実績を残している。
●秋田市のアニメ会社 ㈱つむぐ秋田アニメLob(ロブ) 本社を東京から秋田市に移したアニメ制作会社である。2017年に東京に設立された㈱つむぐ作画技術研究所が出発の原点で、川口市への移転を経て、地方に眠っているアニメ好きな人材を発掘し、育成したいとの思いで、スタジオは川口に残して本社を秋田市に移した。東京と秋田との距離はまったく問題がなく、打合せや作品素材のやりとりはすべてデジタル化されオンラインで行われている。本社にはアニメーター(セル作画者)を養成する教室を設け人材の育成にも取り組んでいる。秋田県や秋田市の誘致企業に認定されて公的な助成を得ることができた。代表的な作品には、鬼滅の刃(劇場版)・無限列車編、機動戦士ガンダム水星の魔女、ちいかわ(2024年から3年連続日本キャラクター大賞受賞)など名作がある。秋田から人気アニメ作品やアニメーターが巣立ちつつある。
●青森市のゲームソフト会社 ㈱ゲームスタジオ 本社は東京にあり、業務用から家庭用ゲーム機、PC、携帯、スマートフォン対応したゲーム開発を中心に行っている。青森市出身の雪田泰章氏が青森市にオフィスを新設した(2017年)。雪田氏以外の従業員4名も青森出身である。雪田氏は私事で青森にUターンすることになり、会社から雪田氏の経験と実績を青森で活かしてみないかと勧誘があり、青森にオフィスを立ち上げることになった。雪田氏は東京勤務の時は通勤に片道1時間半をかけていたそうで、今は大幅に短縮して家族と過ごす時間や趣味を楽しむ時間が増えるなど、Uターンした効果を語っている。取引は、大手のコナミ、セガ、任天堂、タイトーなどである。主な作品に、ピンチ50連発、棋士・藤井聡太の将棋トレーニング、脱獄ごっこなどがある。
(詳細は青森県企業立地・創出課「青森県産業立地ガイド」インタビュー記事を参照)。
紹介したのは東北での一例だが、全国にはいまや多くのコンテンツ産業が展開している。惜しむらくは現在、半導体やデータセンターなどAI関連産業の地方展開が話題となり、コンテンツ企業のうごきについて報道される機会が極めて少ないことである。今後は日本の成長産業として注目されマスコミで取り上げられる機会が増えることも予想され、地方への展開が期待できるだろう。
コンテンツ産業と観光振興 コンテンツ産業は、今や地方にとって企業誘致の対象として市民権を得て、雇用創出や若者定着に寄与していることに加えて、創意工夫により観光資源として活用しマニアや観光客の誘致にも一役買っている事例も見受けられる。
●鳥取県北栄町(ほくえいちょう) コナンの里 鳥取県中部、日本海に面した人口約13,000ほどのナシ、ブドウ、スイカが名産の農業の町である。北栄町は1994年から30年以上の長期ロングセラーアニメ「名探偵コナン」の原作者、青山剛冒(あおやまごうしょう)氏の出身地である。名探偵コナンに会える「コナンの里」と銘打って、コナンブランドを活かしたコナン一色のまちづくりとしてファンには名高く“聖地”となっている。駅前から続くコナン通りには、コナンや登場人物のオブジェが立ち並び、「青山剛冒ふるさと館」では、青山氏の創作の世界や名探偵コナンの魅力を体感できるほか、イベントや原画の展示、キャラクターグッズが買える。
また最寄りのJR山陰本線由良(ゆら)駅は「コナンの駅」の愛称をもち、遠方からファンが訪れ乗降客の増加も見られる。さらにコナンブームは全国にも波及、劇場版コナンは全国各地を舞台にしていて、京都、函館、野辺山(のべやま)、八丈島などは「コナンの聖地巡礼」と称して、大手旅行会社がツアー化するなど大人気で、観光の活性化につながっている。 ●秋田県横手市 釣りキチ三平の里 東北では秋田県横手市にある「釣りキチ三平の里」をあげてみたい。釣りキチ三平は1973年から1983年まで連載された人気マンガとアニメである。原作者の矢口高雄氏は旧成瀬村(現横手市)出身で、市では釣りキチ三平にちなんで廃校を利用し矢口氏の原画の展示、キャンプ施設、農園、魚つかみ取り、手打ちそばなど揃えた体験学習館を整備した。廃校を利用しているので立派さはないが、山間の中の自然が豊かな環境の中で親子やアニメファンに人気である。また県内の団体や企業は三平をキャラクターにして、図書カードやテレホンカードを発行(オークションで高値取引)したり、ラーメン(比内地鶏スープ)、人形(フィギュア)、名産スイカの輸送用段ボールの絵柄に利用している。

引用:施設案内 「釣りキチ三平の里」体験学習館|横手市公式サイト ●福島県須賀川市 円谷英二ミュージアム 須賀川市は、ウルトラマンやゴジラに代表される“特撮の神様”と呼ばれた円谷英二監督(1901~1970)の出身地で、彼の功績を残すために2020年に円谷英二ミュージアムを整備した。円谷氏の歩みをパネルや映像で紹介するほか、特撮で使用したミニチュアなど1,000点余や特撮に関する図書を展示するなどして、円谷の功績や特撮の魅力を発信しています。また特撮技術を後世に伝えていくため「すかがわ特撮塾」を立ち上げ、特撮人材の育成や特撮マニアの交流活動に取り組んでおり、デジタル技術に淘汰されつつある特撮技術の継承と中心的な存在になることが期待されている。
ほんの一例を紹介したが、アニメや漫画、映画といったコンテンツ産業の誘致はマニアたちに限らず一般人にとっても楽しみ、学べる観光資源にもなり観光消費の創出につながっている。

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