【第2回】Uターンして青森唯一のハウスでミニトマト栽培に挑戦 ベジ・ファクトリー 代表 佐藤郁哉さん
- 8月4日
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更新日:8月6日
青森市内から弘前方面に国道7号を進み、藤崎町の産直施設「ふじさき食彩テラス」の交差点を右折すると、田園の中にベジ・ファクトリーの農業ハウスが見えてきます。
今回は、弘前市出身で高校卒業後、豊橋市の鉄工メーカーに就職したのち、ふるさとに戻り、未経験だった農業の経営に転身した佐藤さん(33歳)を紹介します。
7月下旬、取材に訪れた時は、雄大な岩木山を背景に農業ハウス2棟の中で真っ赤なミニトマトがたわわに実り収穫の時を迎えていました。

(鉄工所の仕事から未経験な農業経営へ)
弘前の工業高校を卒業後、豊橋市にある鉄工メーカーに就職した佐藤さん。会社では車や船の部品づくりに携わり機械装置の操作や補修の経験を積み、後にそれが農業経営にも活かされることになります。
「卒業後は県外に出て一度はチャレンジしたかったのです。友達の多くも県外に就職しましたが、それが当たり前でした」と佐藤さんは昔を振り返ります。「給料が地元企業よりも倍くらい高く、寮生活で食事も付いて福利厚生が充実していました。また機械の部品づくりや補修など、ものづくりの面白さを知りました。しかし、一生このまま豊橋で終わってしまってよいものか、と考えるようになり、青森に帰ろうと思ったのです」とUターンのきっかけを語ります。
8年前に青森に戻り、七戸町にある県立営農大学校で1年間農業の基礎を学んだのち、弘前市のミニトマト農家での1年間の研修を経て農業経営に興味を深めていきます。「実家は農家ではないのですが、青森に戻って1年ほど実家でいろいろな野菜を育てました。そのうち野菜が成長していく楽しみを覚え、自分は農業に向いているのではないか、と思うようになりました。そして営農大学校に入学して農業のイロハを学びました」と農業へ関心をもったきっかけを語ります。
営農大学校を卒業後は、県の新規就農者に認定され、国から年間150万円の無利子融資を受けることができ農業経営をスタートすることができたとのことです。「一般の金融機関からは、ゼロからの出発では担保がないし経営が成功するかどうかもわからないので、融資は受けられませんでした。しかし農業改良普及所の助力もあって、1年かかって国から融資が受けられ大いに助かりました」と、資金調達や起業の苦労を振り返る佐藤さん。
(青森で唯一の木骨ハウス)
「とにかく積極的に農業の情報を集めました。そして興味をもったのが、見学先の花巻市の農家から情報を得た木骨ハウス栽培というものでした。大船渡市にあるその農家に出向いて話を聞き、木骨ハウスの良さを知ってひとめぼれしました」と語る佐藤さん。早速、大船渡市にある木骨ハウスの特許をもつ創研㈱を訪ねて交渉を重ね、青森県内で初めて木骨ハウスを導入することにしました。
※木楽創研㈱は本社を岩手県大船渡市に置き、間伐材を活用して農業ハウスを建設する特許「キラクトス」をもち、平成27年に東北地方発明奨励賞受賞(発明協会)。
木骨ハウスの特徴として、一般に農業ハウスの骨組みは鉄製(鉄骨かパイプ)ですが、木骨ハウスは間伐材を有効利用すること、鉄製のものに比べて二酸化炭素の排出(材料の製造過程で)が1/20と少なく環境に優しいこと、柔軟性のある木材を使った特殊な骨組みのため(特許)雪の荷重に強く雪国に適した工法とのことです。佐藤さんの農業ハウスがある辺りでは積雪が3メートル近くになるそうですが、ビクともしないとのことです。ハウスの規模は一棟が幅9メートル、奥行45メートル、高さ6メートルで、2棟あります。「骨組みは特許をもつ木楽創研㈱にお願いしましたが、それ以外の給水装置やセンサー装置、栽培ポット(土のうに土を詰めたもの)などはすべて自分の手作りです」と佐藤さん。なるべく初期投資を少なくし生産コストを低くして価格を抑えた商品づくりに徹しているとのことです。一般の鉄骨ハウスの半分程度の費用で済み、多くの部分を手づくりで建設できたのは鉄工メーカーで培った技術やノウハウが活きたそうです。
現在はミニトマト2種類(サマーとフラガール)を生産していて、「木骨ハウスで育てた津軽旨熟」という商標を登録しています。ミニトマトを選んだ理由は、栽培しやすいこともありますが、150以上の種類もあって味の違いで差別化でき付加価値が出やすいこと、そして弁当には必ず赤いミニトマトが彩を添えるなど需要が安定しているからで、今後ハウスを増設する考えもあるようです。ミニトマトのほかに、茎ブロッコリー、ズッキーニ、ジャガイモ、毛豆、珍しい白オクラなど多品種の野菜を育てて産直施設に出荷しています。取材当日にも、佐藤さんのトマトや野菜を買いに来たお客が数組いました。

(勘に頼る栽培から科学的な農業経営へ)
ハウス栽培は室内の環境によって生産の出来が大きく左右されます。佐藤さんは、IOT(Internet of Things)を利用、ハウス内の温度、湿度、二酸化炭素、日照量などのデータを室内に設置したセンサーによって収集し、適正に制御することで安定した生産を可能にしています。スマホで生育状況を把握し最適な収穫時期が判断でき、また生育上の問題点や課題も明らかになって解決策をさぐることもできるそうです。
「勘と経験が頼りの農業は終わり、今はスマホで環境制御しながら作物生産を行うことができます。だから自分のように農業の経験のない人でも農業経営ができる時代になったと思います」と、これからの農業の姿についても語ります。

(農業者仲間の支えがあって)
農業者は一般に、JA組織に加入して生産や販売で支援を受けますが、制約を受ける部分もあります。佐藤さんはJAに参加するより若い農業者とのネットワークを大事にしています。佐藤さんは「今、新規就農者たちと“あおもり”をつくって情報交換など連携していますし、藤崎町の若手農業者の会“ワゲモンド”の副会長をしています。若い者同士が創意工夫しながら自由な活動をして農業を活性化しようと取り組んでいます」と語り、若い農業者の活動に期待を持ちました。※ワゲモンドとは若い者たちという意味

(次代へのメッセージ ~ 強い意志と精神力、勇気を持とう ~)
一旦は県外に就職したものの、青森に戻りたい、と考える若者も少なくありません。佐藤さんは、自分がUターンする時の経験から「ふるさとに帰りたいけど、どこに相談したらよいか、ふるさとにどんな仕事があって、就職するにはどうしたらよいのか、また起業するにはどのような段取りが必要で、どのような支援が受けられるのか、など、地域の相談体制をわかるようにしてほしいです」と語ります。
また、Uターンするには、その目的を明確にしてふるさとでやり抜くという強い意志と精神力、そして勇気と度胸が必要だと言います。特に起業するには大きな投資をしないことが大切だとも語ります。「儲けることも必要ですが、それ以上に消費者が自分のつくったものを喜んで買ってくれることにやりがいを感じます。収穫はこれから夏場にピークを迎えますが、土日はありませんし、早朝から深夜までの作業で休む暇がありません。収穫、選別、パック詰めなどして、いつのまにか深夜になってしまい、作業場に泊まることも少なくありません」と日焼けした顔に自信があふれます。最後に「好きなことを仕事にすることが一生の価値だし、苦しくても頑張って耐えられるし長続きすると思います」と次代へのメッセージとして締めくくってくれました。
とにかく暗い情報が多い農業の世界で、未来の青森農業にキラリと光る佐藤さんを感じた取材でした。
会社名:ベジ・ファクトリー 住所:〒038-1204 青森県南津軽郡藤崎町水木字駒田112
TEL:090-3123-3349
FAX:0172-40-0235
販売は「ふじさき食彩テラス」やネット販売「安心・逸品・青森県産品 まごころふるさと便」にて販売 HP:https://www.vegefac.com/ ネット販売: https://furusatobin.jp/gl/shops/ch/192.html?srsltid=AfmBOorzWvKoI2PEwabxsLUk3m8_g-lMmW4w5VbsIoumRY9AhTPKgpc7

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