【第3回】インバウンドは地域活性化の救世主になるのか (2回シリーズ)
更新日:8月29日
青森のインバウンド効果は期待どおりか
インバウンド消費は日本の農業生産に匹敵
インバウンド誘致に水を差すようで恐縮ですが、果たして、訪日観光客の誘致政策は、地方の活性化に結びついているのだろうか、ということについて考えてみました。
政府は今、「第5次観光立国推進基本計画(2026~2030年度)を進め、訪日外国人観光客6000万人、消費額15兆円をめざしています。世界の半導体市場規模が13兆円(2023年)ほどですから、市場の大きさが想像できると思います(2030年頃の半導体市場は今より拡大してるでしょうが)。
国が公表した2026年上半期(1月~6月)の訪日外国観光客は2108万人と、前年比2%減少したものの依然として高い数字を示しています(日本政府観光局JNTO発表)。内訳は韓国が4分の1を占め、台湾、中国、香港が続いています。消費額は4兆8500億円で、単純計算で1人当たり23万円の消費額になります。日本人観光客のそれは5~6万円ですから4倍多いことになります。これも一つは円安の効果と言えるでしょう。ちなみに2025年の訪日外国人観光客は4200万人で過去最多を更新、その消費額は9兆5000億円にのぼり、日本の農業生産額とほぼ同じ規模ですからその大きさがわかります。
青森のインバウンド効果は小さい!?
青森県の観光客数は、令和6年で約1400万人と前年比8%ほど増えていますが、観光消費額は1985億円と前年比4%増に止まっており、近年の物価上昇を考慮すれば横ばいと言えるでしょう。単純計算すると1人当たりの消費額を約14万円となり、全国平均約23万円の6割と低い水準です。。
その中で青森を訪れる外人観光客(以下「インバウンド」)は増加傾向にあり約35万人と前年比50%増となっています。青森県もインバウンドに大きな期待を寄せ、台湾や韓国との定期航空便の就航や大型外国クルーズ船の誘致に取り組んでいます。特にクルーズ船の寄港は2026年に東北最多の46隻が予定されていて、20年前はわずか4隻の寄港で1万人にも満たなかったものが、今や乗客6万人、乗組員3万人と東北一を誇っています。彼らの青森での消費額は大きいと思いきや、実はそうではないらしいことが先日の青森商工会議所の調査でわかりました。2026年1月に、青森市内の商店街を対象にクルーズ客の消費動向をアンケートしたところ、1人当たりの消費額は1万円未満が9割で、うち5000円未満が6割を占めるという実態だったのです。一部の商店街の実態ですので一般化することはできませんが、消費額が増えたと回答した店舗は2割に満たず、やや増えた店舗を含めても4割に止まっており、インバウンドの消費効果は決して大きいとは言えません。クルーズ船は、青森に朝入港し夜出港するパターンが一般的で、滞在時間は12時間ほどですので客の行動範囲は制限されます。訪問先はワ・ラッセやアスパム、三内丸山遺跡が中心で、駆け足なら観光バスで八甲田や十和田湖、弘前方面に出かけることになります。乗組員は日用品の買い出しで市内の商店街に出かけるくらいでしょう。短い滞在時間のためにお金を使う時間と観光スポットが少ないのか、せっかく東北一のクルーズ船の寄港地でありながら、期待したほどインバウンド消費が大きくはなく課題が多いと考えられます。
クルーゼ船が入港した日に青森の街を歩いていると、外人観光客のグループや夫婦が目立ちますが、何をするでもなく、ただぶらぶらと商店街を歩いている姿を多く見かけます。節約しているのか、訪ねたい観光スポットが見つからないのか、観光サービスが不十分なのか、ともかくもったいない気がします。商工会議所の調査によると、クルーズ客の旅の目的の一番は、歴史や文化となっています。
航空便や新幹線で訪れるインバウンドについてみると、青森市内のホテル宿泊費の高騰も一つの課題ではないか。欧米客にとっては円安なので日本の物価の安さの恩恵を受けているとは思いますが、アジアや日本人の観光客・ビジネス客にとってホテル宿泊費の高騰には閉口しているはずです。私もその一人ですが、コロナ禍前やインバウンドが増える前に比べて、ホテルの宿泊料は2~3倍に跳ね上がっています。以前は8,000円前後で泊まれたホテルが今では倍々ゲームになっている状況です。ホテルの売上が増えることは地元観光業にとって歓迎すべきことですが、そこには節度があって良いものです。大切なお金を使って来る観光客や決められた出張費で賄わなければならないビジネスマンにとって、高騰する宿泊費は致命的で、郷土料理や土産などに使いたいが財布に余裕がなくなってしまいます。その結果、街で外食する機会が減り、コンビニで弁当を買ってホテルの部屋で済ます客が多くなるという現象が起こっているように感じます。事実、ホテル近くのコンビニに行くと弁当や飲み物を買う外人客が目立ちます。中央資本のホテルや一部の外食産業がうるおい、本来インバウンドの恩恵を受けてしかるべき飲食店や土産物店など地元資本への経済効果は小さい、その実態を数字で突きつけたのが青森商工会議所の調査結果だと思います。そして外人観光客へのサービスとして必要な投資、たとえばキャッシュレス決済対応、フリーWi-Fi導入、外国語表記、スタッフ増員など、投資に見合った回収ができるのだろうか、おいしい所だけを中央資本が吸い上げる姿が浮かんでしまいます。
いかに地元資本が潤い、域内経済循環を高めるかが求められます。「個」の努力では限界がありますので、街全体が「連帯」して歓迎ムードを醸成する、たとえば外国語で対応できるガイドや冊子・パンフレット、アナウンス、メニュー、サイン(標識)など身近なところからできることはあります。衰退しつつある函館は、まち全体が歓迎ムードであふれ、旅行客を心地よき気分にさせてくれ、また来たい気持ちを起こさせる努力が感じられます。人口規模の同じ函館ができて青森にできないはずはありませんので、ここは行政と民間が知恵を絞って頑張ってほしいと思います。

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